JAPAN MINUTE in Suwa City

3つのストーリーが伝える諏訪の技術

「東洋のスイス」と呼ばれた諏訪のものづくり文化を世界に発信したい

写真左:合同会社シーラカンス食堂・代表 小林新也  写真右:株式会社松一 代表取締役社長 松澤正明さん

はじめまして。合同会社シーラカンス食堂の小林新也です。

私は、日本各地の伝統技術を次世代に伝え世界に広めたい!という思いから、2011年にデザインスタジオ「シーラカンス食堂」を立ち上げ、デザインの力で地域財産の新たな魅力を引き出す活動をしています。

 

かつて「東洋のスイス」といわれた長野県諏訪市ならではのものづくり文化にとても興味があり、今回Japan Minute(ジャパンマイニュート)に参加させていただくことになりました。

 

私はこれまで、兵庫県小野市のそろばん、播州刃物、兵庫県西脇市の播州織、島根県浜田市の石州瓦など、日本の地域財産を題材に、ブランディングから商品開発、世界市場へ「伝える」ことに注力した販路開拓に取り組んできました。

これまでの経験を生かしつつ、職人の本気を世界に伝える、まだ誰もやったことのない新しい取り組みにチャレンジしたいと思います!


兵庫県小野市のそろばんをモチーフにデザインした時計「そろクロ」

兵庫県小野市「播州刃物/BANSHU HAMONO」ブランド


株式会社松一は創業90年!お菓子製造、腕時計部品メーカーを経て精密部品加工業へ

株式会社松一 代表取締役・松澤正明さん

今回、プロジェクトをご一緒するのは、微細切削加工や“磨き”に高い技術を持つ株式会社松一さん。

創業は昭和2年、来年90周年を迎える老舗企業です。もともと「松一商店」という雑貨屋からスタートし、その後、ものづくりへ。海軍飛行機→下駄→お菓子→腕時計部品へと、時代の変化にあわせて作るモノを変えてきました。

 

お菓子製造では「松一のあられ」として全国出荷していましたが、需要の落ち込みから2代目・正太郎さんの時代に、当時諏訪地域の一大産業だった腕時計部品加工業として再出発することになったそう。

2代目・正太郎さんは元フィルムメーカーの技術者。そのため、製造方法や技術分野で独自の力を発揮することができ、「腕時計の裏蓋といえば松一」と呼ばれるまで成長したとのこと。

 

現在は、腕時計部品製造で培われた、技術開発、加工機設計、微細加工、研磨加工などの技術をベースに、精密部品加工業へと生まれ変わっています。

顕微鏡を使い、目には見えないバリを除去!ハイレベルな“磨き”を強みとする超精密切削の匠集団

松一工場内には、さまざまな切削機械が所狭しと並ぶ

松一さんがもっとも得意とする加工は、刃やドリルを使って対象物を”切る”、”削る”の切削加工と、”磨く”の研磨加工。 特に”磨き”に関しては、超精密加工を得意とする諏訪地域の中でも一目置かれる技術力を持っています。

 

職人仕事の一つに「バリ取り」というものがあります。バリの中には機械では除去しきれない非常に細かなものもあり、松一さんはこういったバリを顕微鏡を使って人力で取り除く作業を部品メーカーから受託しています。

 

バリ取りなどの精密部品の仕上げ加工、製品検査が現在の主力事業ですが、”磨き”をさらに究めるため、14年前に「技術開発研究室」を設立しました。ここでは技術研究のかたわら、大手メーカーや学術機関からのオーダーによる試作品開発が行われています。

日夜”磨き”の技術を研究している松一の研究機関「技術開発研究室」

技術開発研究室では「磨きの匠」が自ら技術開発に取り組む

松一さんの従業員数は25名(2016年10月現在)ですが、この技術開発研究室の研究員は5名。その中で、今回プロジェクトを一緒に進めていくのは、代表取締役社長の松澤正明さんです。

 

松澤さんは、切削加工を行う同業者の多い諏訪地域でも「磨きの匠」として知られており、同じ金属素材、同じ研磨機を使っても仕上がりの差は歴然。まるで鏡のように美しい鏡面加工を行うことができるのです。

研磨機に向かう松澤さん。徐々に素材が磨かれていく

写真ではわかりにくいですが、鏡のように美しい表面に仕上がりました



この技術を広めるため、社長業のかわたら、兵庫県立大学の大学院にも通っています。院では、磨きを科学する取り組みを行っています。

 

設備投資にも積極的で、研究室には市価数千万円の切削機械から、超音波を使った特殊な切削機械、切削を行う刃具そのものを作る機械まであり、バフ研磨機・ラッピング研磨機・バレル研磨機など”磨き”に関しては色々と対応ができる設備が揃っていました。

 

同業者や研究者とのネットワークづくりにも積極的で、物質・材料に関する国立研究機関からは、世に出る前の新素材を提供されることもあるそう。素材に関する深い造詣はまさに「マテリアル博士」といった印象で、新しいものへの好奇心、磨きに対する飽くなき探究心にはただただ圧倒されるばかりでした。

技術を技術そのものとして伝えるのでなく誰にとってもわかりやすいモノに変えて伝えたい

研磨技術への熱い思いを語る

無口で少し怖そうな方と勝手に想像していた松澤さんでしたが、実際にお会いするととてもチャーミングな方。研磨の技術に誇りをお持ちで、業界全体を底上げしようという積極的な姿勢に感動しました。

高い次元の技術力には驚きましたが、技術の凄さだけを切り取ってもなかなか人にはうまく伝わりません。なんとかして松澤さんの技術力や、新しいものへの好奇心が素直に伝わる方法を考えてみたいと思います。

 

個人的に「長野といえばスキー!」でしたが、今回諏訪市を訪問し、さまざまなものを見て、触れて、体験すると、なるほど「東洋のスイス」といわれた時代があったことに納得ができました。プロジェクトを通して、そんな技術産業のイメージをあらためて確立できるような、素晴らしいモノを作りたいと思います。

プロジェクト次回工程では、さらに打ち合わせを重ね、最適なアウトプットを模索します。ぜひご期待ください!