JAPAN MINUTE in Suwa City

3つのストーリーが伝える諏訪の技術

Lightface関係者に聞く(1)総販売店・大日本印刷インタビュー

大日本印刷株式会社 上田哲也さん(左)

こんにちは。ロフトワークの秋元友彦です。

今回は次世代LED発光パネル「Lightface(ライトフェイス)」の商品開発・販売活動を担当している大日本印刷株式会社(以下:DNP)の情報イノベーション事業部 上田哲也さんに、Lightfaceを取り扱うことになった経緯やその魅力についてお話を伺いました。

LightfaceとDNPの高い親和性

秋元:DNPは印刷や出版というイメージが強いのですが、Lightfaceの販売を担当することになったきっかけや、どの部分を担当しているのか教えて下さい。 

 

上田:Lightfaceはアートディレクター・戸田正寿さん監修のもと、光学技術にオンリーワンの強みを持つ日東光学さんが製造しました。DNPはこのプロダクトの活用提案や商用化を行い、きちんとビジネスの軌道に乗せていく部分を担当しています。

戸田先生とはDNPのギンザ・グラフィック・ギャラリーで個展を開催いただいたこともあり、以前からお付き合いがありました。戸田先生にLightfaceのプロトタイプを見せて頂いた時、DNPが行う2つの事業との親和性を感じて、取り扱いを決めました。

 

1つは空間デザインの事業です。これは商業空間のディスプレイや、住空間の建材なども扱っています。

あまり知られていませんが、DNPは1970年代にはすでに空間デザインを事業として手掛けていました。カタログなどの印刷物からスタートして、什器やPOPなどの販促物制作に至り、それがやがて「商品を置く空間自体もよく魅せる」という方向に発展したのです。

店舗やショールームなどの商業空間プロデュース、サインやVIの制作はかなり行っていまして、空間演出に役立つ新しい技術やマテリアルを積極的に取り込んできました。

Lightfaceもまさにその一環で、空間デザインの可能性を広げるプロダクトとして活用できるのではないかと考えたのです。

アート表現の一形態としても期待できる

     Lightfaceはインテリアとして、アートとして、さまざまな用途が期待できる

上田:もう1つがアート関連の事業です。戸田先生はLightfaceのコンセプトを「光のキャンバス」としてアートシーンでの利用を出発点としましたが、その方向性がDNPのアート展開と合致したのです。

DNPは、絵画などの芸術作品をデジタイズ(=高精彩のデジタルデータに置き換える)して、その美しさを半永久的に保つデジタルアーカイブ事業に力を入れています。

そして、そのデータはDNPの高いプリント技術を生かして複製画となったり、先端のデジタル技術を駆使したデジタルミュージアムとして新しいアート鑑賞の体験に生まれ変わります。

ルーヴル美術館やフランス国立図書館などのミュージアムと協働し、芸術文化を楽しむ方法をカタチにする「DNPミュージアムラボ」はその代表的な取り組みです。

アナログな芸術作品をデジタル化し、それをまた別のアナログ表現に変換する──このプロセスにおける表現、アウトプットの一形態としてLightfaceをラインアップできるのではないかと考えたのです。

高い「演色性」が対象をカラフルに、鮮やかに見せる

秋元:Lightfaceは非常に薄く、均一に光るという特長を持っていると思うのですが、他の特長や、それらを生かして実際に使っているシーンを教えて下さい。 

 

上田:日東光学さんの光学技術を生かした高い「演色性」が強みです。演色性とは、対象物の本来の色をどれくらい再現できる光かを表す指標で、この数値が高いほど対象物の色を鮮やかに美しく見せることができます。

普通のLEDは演色性を示す数値がRa70やRa80ぐらいですが、LightfaceはRa93と高い値を示します。つまり、対象物を美しく見せるディスプレイにはとても良いスペックなので、その点はアピールしたいところですね。

実際の利用事例ですが、商業空間においては、ある小売店チェーンの商品棚に実際に使っていただいています。

アートシーンでの事例としては、今年の9月から10月にギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催したNOSIGNERさんの企画展でお使いいただき、これが大変好評でした。

DNPでは今後「光るアート」としての可能性をさらに追求したいと考えています。DNPでライセンスを管理する絵画をフィルムに高精細印刷し、Lightfaceに貼り付けるのです。オンデマンドで好きな絵画を選んでいただけるようにすれば、アートとしてだけでなく、新しいインテリアとして提案できるのではないかと。

 

あとは、空間と一体化できるLightfaceの薄さを生かして、照明と内装の融合という可能性も模索していきたいです。

これは戸田先生がおっしゃっていたことですが、中世の教会は天井一面が壁画になっています。昔は照明がロウソクだったので、天井を全面キャンバスとして使えたわけです。

現代では天井に照明が必要なので、天井をキャンバスにする発想がなかなか生まれない。でも、Lightfaceならば天井に埋め込みが可能で、照明と同時に絵画やアートピースとしての役割を担えます。照明と内装を融合することによって天井というスペースを大きく変えていく提案ができればいいなと思っています。

かたちと理由 NOSIGNER展(会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー)にて、作品の展示台としてLightfaceを32枚(2.4m四方)並べて設置した(写真:藤塚光政)

かたちと理由 NOSIGNER展(会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー)にて、作品の展示台としてLightfaceを32枚(2.4m四方)並べて設置した(写真:藤塚光政)

自由な発想で新たな可能性を広げていきたい

秋元:今回のプロジェクトでは、さまざまな表現に取り組むクリエイターにLightfaceの新しい活用アイデアを考えてもらう「ハッカソン」を開催したいと思います。ハッカソンに向けて、Lightfaceの課題や、クリエイターに期待したいことがあれば教えてください。

 

上田:課題は、あまり重さに耐えられないことですね。どうしても構造上は、人を支える、重いものを載せる、というのは現状では難しい。

あとは、サイズや形のバリエーションがもっとあればというお声もいただきます。また、単体のマテリアルではなく、たとえば光るテーブルとか、Lightfaceを使ったプロダクトにした方がビジネスとしては展開がしやすいのかもしれません。

いずれにしろ、まだ世の中に知られていないプロダクトなので、もっと多くの人に知ってもらえる、使ってもらえるような活用アイデアが欲しいというのが現状の一番の課題ですね。

 

Lightfaceの新しい可能性を引き出すアイデアについては、クリエイティブな感性を持った人たちに、自由に発想してもらった方がいいものが生まれるのではないかと思っています。

アートという文脈においてLightfaceがどう料理されるかは個人的にすごく興味のあるところです。みなさんの素晴らしいアイデアにとても期待しています。

 

秋元:本日はありがとうございました。